先日AIの開発をされている患者さんとお話をしたとき、「これからAIがどんどん進化していく中で、今後も生き残っていく仕事は何だと思いますか?」という話になりました。その患者さんがおっしゃっていたのが、「オリジナリティのある仕事をしている人はこれからも強いと思います。」という言葉でした。
その話を聞いて、ふと自分の仕事について考えてみました。ありがたいことに患者さんから「先生の治療って他で見たことがないですね」「なんだか手品みたいですね」と言っていただくことがあります。
もちろん、自分では「変わったことをしている」という感覚はありません。ただ改めて考えてみると、当院の治療は一般的な「鍼灸」「マッサージ」「カイロプラクティック」という一つの枠には収まりにくいものになっているのだと思います。
当院では毎回の治療で問診を行います。前回の治療から今日までに身体にどのような変化があったのかを口頭で確認し、そのうえで「筋肉の動きや硬さ」「関節の可動性」「経穴の反応」「身体の反射」「その他、その日に身体に表れている反応」などを実際に確認していきます。その結果を総合して、その日の身体の状態を診断し、施術内容を決めます。
そのため施術内容は毎回同じではありません。身体の歪みを調整することを中心にカイロプラクティックを行う日もあれば、鍼灸を使って自律神経の調整を中心に行う日やマッサージを中心に行う日もあります。
大切なのは「今日はカイロプラクティックの日」「今日は鍼灸の日」などと最初から決めてしまうのではなく、「今日の身体には何が必要なのか」を考えて施術することだと思っています。
また腰痛や寝違いなどの場合でも痛みのある場所を直接刺激するとは限りません。むしろリスクや刺激量を抑えるために、肘から下や膝から下など痛みのある場所から離れた部位を調整していくことも多々あります。
すると初めて治療を受ける方は「え、そこですか」という反応をされます。そして治療後に「なんで痛いところを触っていないのに痛みがなくなったんですか?」「手品みたいですね」と驚かれることがあります。
もちろん手品でもスピリチュアルでもありません。身体には局所だけを見ていてはわからない様々なつながりがあります。
数千年前から積み重ねられてきた東洋医学的な考え方もあれば、現代医学や解剖学、生理学などから説明できる部分もあります。一見すると不思議に見えるかもしれませんが、私自身はこうした身体の反応を一つ一つ確認しながら施術をしています。
少し自分語りをします。大学を卒業し一度は就職をしましたが、以前から興味を持っていた治療の道に進むため、専門学校に入りなおしました。
当時は免許のない学生でも働かせてくれる職場がまだ多く、学校に通いながら現場での修業を始めました。当時お世話になっていた職場は昔ながらの職人気質なところで、手取り足取り教えてもらうというより「背中を見て覚えろ」といった環境です。ただ、そこには様々な手技を使う先輩たちがいました。
そこで僕がやったのはとにかく真似をすることでした。いろいろな先輩のやりかたをできるだけ多く見て真似をして試してみる。そうしているうちに学校を卒業して、自分の患者さんを診療できるようになりました。
ところがそこからが大変でした。なかなか思うように治せない。患者さんを前にして変な汗をかく。そんな毎日でした。「少しでもうまくなりたい」そう思って先輩方に治療の練習をつけてもらったり、休みの日には外部の勉強会に参加したり、国会図書館に行って文献を読み漁ったりしました。
そんな生活を何年も続けたある日、ふとあることに気付きました。
それまでの僕は「鍼灸は鍼灸」「カイロプラクティックはカイロプラクティック」「マッサージはマッサージ」「整体は整体」という風に別々の治療と考えていました。
ところがよく考えてみると、先輩方は施術している内容は全く違っていても最終的に「痛みを取る」というゴールにたどり着けている。それならば、そこには何か共通するものがあるのではないか。
そう考えた瞬間、今までばらばらに見えていたものが一気につながったような感覚がありました。
そしてそれ以降、僕の中で治療のボーダーがなくなりました。「これは鍼灸だからこうする」「カイロプラクティックだからこうやる」という考え方ではなく、今まで学んできたものをミックスして、そのすべてを使って目の前の身体を診る。そういう治療になっていきました。
だから、当院では毎回施術内容が変わります。患者さんが変われば身体も変わります。同じ患者さんでも昨日と今日では身体の状態が違います。だからこそ毎回同じことをする必要はないと思っています。
最初にお話ししたAIを開発している患者さんの「オリジナリティ」という言葉。これは治療家にとってもとても大切なことだと思います。ただ僕の思うオリジナリティとは「誰もやっていない変わったことをする」という意味ではありません。
むしろ「自分がこれまでに経験してきたものを一度バラバラにして、自分なりにつなぎなおすこと」それが結果としてその人にしかできない仕事につなっていくのではないかと思っています。
最近は「タイパ」「コスパ」という言葉をよく聞きます。できるだけ無駄を省いて効率よく学ぶ。もちろんそれ自体は悪いことではありません。
ただすべての「無駄」を省いてしまったら、そこから生まれるものも均一化してしまうのではないでしょうか。
僕自身、若い頃にいろいろな先輩の治療の真似をしたり、休みの日に勉強会に行ったり、国会図書館で文献をあさったりした時間は決して効率のいい時間ではありませんでした。
一見すると遠回りだったと思います。でもその遠回りしたからこそ、今の自分の治療につながっています。AIとの差別化がこれからますます重要になっていくのであれば、「最短距離で答えを手に入れることだけが正解ではない」そんな時代になっているのかもしれません。
遠回りをする、いろいろなものを見てみる、一見関係のないものを学んでみる、そしてそれを自分の中で組み合わせてみる。そうやって積み重ねたものが、いつか「その人にしかできない仕事」になっていく。
むかしから言われている「急がば回れ」という言葉は、もしかするとAI時代の今だからこそ、改めてその意味を考えてみる価値があるのかもしれません。
だいだら鍼灸整骨院
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